私は、現在、40代の会社員です。
大学卒業後、約20年インターネット業界で働いています。そんな私が、今、演劇を始めたルーツをふりかえります。
今回は、ビジネススキルの1つ「プレゼンテーション(以下プレゼン)が上手くなりたい」課題についてお話しします。
私はこれまで、人前に立つ「講演」の仕事をしたことがありました。多いときは月2回ペースで、規模は30人程度から400名規模までと様々です。プレゼンが上手だったからオファーがあったわけではなく、職務上必要になったから与えられた機会でした。当然、最初から上手く話せるわけではなく、最初のうちは事前に原稿を用意して、紙芝居のようなプレゼンをしていたことを記憶しています。
そんな時に、社内でプレゼンの達人に出会います。その方のプレゼンは、とにかく最後まで飽きずに聞いていられるのが不思議でした。この極意を教えていただきたいと思っていたら、ご縁がつながり、教えを乞うことになりました。その方から色々教えていただいた中で、シンプルに一番印象に残っていることは、
“プレゼンは、「自分の話したい事を一方的に伝えることではない。相手が何を望んでいて、こちらがどんな目的で相手をどうしたいか?」なんだよ”
“聞き手(お客様)の大切な時間を無駄にしないよう、準備を怠るな”
でした。
プレゼンはどうしても「発表」のイメージが強く、自分が話したいことが中心になりがちなのですが、大切なのは「受け手」側で、それらの人を「どうしたいか」なのだということ。プレゼンもコミュニケーションの1つなんだなと。また、一瞬の本番のために、準備を徹底的に行うことがいかに大切かということ。私はこの方の教えを参考に、自分のプレゼンをブラッシュアップしていきました。今では、プレゼンに対する苦手意識もなくなり、手ごたえを得るところまでに至りました。
演劇と脱線しているのかもしれませんが、この達人こそが、演劇経験者だったのです。その方から薦められた著書が「風姿花伝」でした。
「風姿花伝」は、室町時代の能役者「世阿弥」が記した能の理論書です。能の行法・心得・演技論・演出論・歴史・能の美学などが端的に書き綴っています。この1冊で、人生哲学的なことが学べます。この書を読み進めていくうちに、私の中で、芸事を極めている方々のリスペクトが高まりました。
すらすら読める風姿花伝 (講談社+α文庫)
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からいくつか抜粋します。
そもそも、花というものは、万木千草(ばんぼくせんそう)において、四季折々に咲くものであるから、ああ春になった、夏になったと、季節ごとにその都度花をみて珍しく思いもし愛で楽しみもするわけである。
能もこれと同じで、見ている人の心に「ああ、珍しい」と思うところがあれば、すなわちそれを面白いと思う心理である。したがって「花」と「面白い」と「珍しい」の三つは本来同じ心から発する三つの側面にすぎない。
「花」のあり方に加えて、見ている人の興味関心、心のあり方も含めて1つであるということに興味を持ちました。観ている側の心が置いてかれるものほどつまらないステージはありませんよね。
また、
各種の芸を稽古しつくし、工夫に工夫を加えて後、はじめて永続する「花」すなわち一生失せない芸の美を知ることができる。
「芸事」は「稽古」ありきだなということをつくづく実感する一説です。一瞬の「花」を咲かせるために必要な準備は怠ってはならないということを教訓として得られます。
ちなみに、あの「ジャパネットたかた」の創業者の髙田明さんがバイブルにしている本だとのことで、本も出されています。芸能の指南書がビジネスにも役立つということがとても興味深いです。
髙田明と読む世阿弥 昨日の自分を超えていく
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というわけで、私が演劇を始めたルーツのビジネス的な側面からのお話でした。「風姿花伝」については、まだまだ語りたいことがあるので、別の機会に書けたらと思います。
(つづく)