2020年版ミュージカル「フランケンシュタイン」の大千秋楽は2/24に終わりました。
この作品を3回も観劇に至った理由を自分なりにひも解くために、色々な側面から振り返ります。今回は「ストーリーが持つ魅力」についてです。
■あらすじ(公式HPより)
19世紀ヨーロッパ。科学者ビクター・フランケンシュタインが戦場でアンリ・デュプレの命を救ったことで、二人は固い友情で結ばれた。“生命創造”に挑むビクターに感銘を受けたアンリは研究を手伝うが、殺人事件に巻き込まれたビクターを救うため、無実の罪で命を落としてしまう。ビクターはアンリを生き返らせようと、アンリの亡き骸に自らの研究の成果を注ぎ込む。しかし誕生したのは、アンリの記憶を失った“怪物”だった。そして“怪物”は自らのおぞましい姿を恨み、ビクターに復讐を誓うのだった…。
※以下、ネタばれを含みます。
■「美」と「醜」のコントラスト
前半は、ビクターとアンリが運命的な出会いから友情を育みます。その後、アンリには悲劇的な運命が待ち受けてはいましたが、アンリはその運命を受け入れ、ビクターのために潔く死んでいく美しさが描かれます。後半は、ビクターが創造した醜い怪物が、ビクターへの復讐を繰り広げるといった落差・・この不条理な展開、コントラストが心を揺さぶり、物語のエネルギーとなっていました。
■「夢」が「欲望」になると悲劇が生まれる
ビクターには、科学者としての「夢」がありました。それは、科学者として“生命創造”をこの手で実現することで、親を疫病で亡くした自分のような悲しみを持つ人を救う「夢」です。それは「希望」でもあり、未知なる世界への挑戦というポジティブな側面がある一方、それを是が非でも実現するのだ、という「欲望」に変化したとき、その結果は悲劇を生むのだ、というアンチテーゼに思えてなりませんでした。これは、例えば、「お金持ちになりたい」と夢を持っていた人が、裕福な生活自体への執着にかられ、いくらお金が手元にあっても毎日が不安で満たされなかったり、生活自体が空虚になったりで、身が滅んでいくという。。まるで、シェークスピアのマクベスの筋と重なる展開は、心にずっしりくるのでした。
■創造主(ビクター)と被造物(怪物)の関係性
物語の後半は、被造物(怪物)が創造主(ビクター)への憎しみ、復讐を中心にストーリーが展開します。ビクターの愛する人たちが、怪物によって次々と命を落としていきますが、ビクターだけは生かされます。それは、怪物がビクターへ「孤独を味合わせたい」という憎悪でもありながら、「生きていてほしい」という希望に思いました。怪物の一番の望みは、ビクターが「生きて、自分を一番に愛してほしかった」のではないかと。。最後は、北極の地で、怪物とビクターは2人きりになり、怪物はビクターの手によって殺されるのですが、怪物はビクターの手の中で、なんとも幸せな顔で死んでいくのです。「これでよかったんだ」という、絞首台で潔い顔をしていたアンリの面影を残していました。愛に飢えていた怪物を思うと心が締め付けられる思いでいっぱいになりました。
■総じて
「フランケンシュタイン」は、200年以上も語り継がれた歴史の重みがあります。それだけ作品が持つ魅力、エネルギーがあるからこそだと思います。ただのホラー小説ではなく、人間の悲喜交交、愚かさ、脆さ、全てが愛おしく思えてしまう、私自身が人生を重ねてきたからこそわかる、そんな作品でした。
■CAST & CREATIVE
<CAST>
ビクター・フランケンシュタイン/ジャック:
中川 晃教 柿澤 勇人 ※Wキャスト
アンリ・デュプレ/怪物:
加藤 和樹 小西 遼生 ※Wキャスト
ジュリア/カトリーヌ:音月 桂
ルンゲ/イゴール:鈴木 壮麻
ステファン/フェルナンド:相島 一之
エレン/エヴァ:露崎 春女
朝隈 濯朗 新井 俊一
岩橋 大 宇部 洋之
後藤 晋彦 白石 拓也
当銀 大輔 丸山 泰右
安福 毅 江見 ひかる
門田 奈菜 木村 晶子
栗山 絵美 水野 貴以
宮田 佳奈 望月 ちほ
山田 裕美子 吉井 乃歌
<CREATIVE>
音楽:イ・ソンジュン
脚本/歌詞:ワン・ヨンボム
潤色/演出:板垣恭一
訳詞:森雪之丞
音楽監督:島 健
振付:黒田育世
美術:乘峯雅寛
照明:高見和義
音響:佐藤日出夫
衣裳:十川ヒロコ
ヘアメイク:宮内宏明
擬闘:渥美 博
ステージング:当銀大輔
歌唱指導:福井小百合
指揮:八木淳太
オーケストラ・コーディネイト:東宝ミュージック
舞台監督:廣田 進/松井啓悟
演出助手:長町多寿子
プロデューサー:篠﨑勇己(東宝)/住田絵里紗(ホリプロ)
Art Direction:小倉利光(YELLOWNOTES)
Photographer:HIRO KIMURA (W)
◼️公式サイト
https://www.tohostage.com/frankenstein/
※お初の日生劇場での観劇でした。